◆ものがたり
1944年、白系ロシアの混血であるが故に、海軍作戦参謀本部から南海の孤島に追いやられた男、ディープ山崎少佐は、日本が戦勝国となった時、敗戦国の子供らに与えるべき納豆を作り続けている。
しかし、彼は来たるべきデモクラシー、そして愛する女、夏枝への思いを断ち切れずに鬱々して日々楽しまない。
一方、その頃夏枝は、大本営敗戦処理班の密命を受け、アメリカの原爆投下地点をドイツに仕向けるべく、単身ベルリンで工作中であった。
ナチス総統、アドルフ・ヒトラーは、何人にも感じたことのない愛しさをこの女に感じ、この無垢なる女と山崎との逢瀬のために、自身はドイツ第三帝国と共に滅びの道を選ぶ。
しかし、悪魔の光を放つというその呪われた原子爆弾の投下ボタンを押せる人間が、果たしてこの世界に存在するのであろうか。
正気の人間ならば、ボタン一つで数十万人もの人間を殺りくできるはずはないのだ。
1945年、アメリカは焦っていた。人類初の原子爆弾投下国としての汚辱からまぬがれるべく、コンピューターが弾き出した、原爆搭載機・B29エノラゲイの乗組員の名は、日本海軍102師団ディープ山崎少佐、その人であった。