ストーリー

両親を失ったみゆき(新井みゆりさん)は一人、島にやってきた。
波に揺さぶられる小さな船の上で目を覚ましたみゆきがみた光景は、砂浜で旗を振る汐里(城戸愛莉)の姿だった。
汐里は生まれつき身体が弱く、それを隠す為に粗野で意地悪で口が悪い、憎まれ役を演じるようになっていた。
それに手を焼いた汐里の母親は病気の療養という名目で、まだ幼い彼女を島で暮らす梓(高山都さん)に預けたのだった。
その島は成長を続ける現代文明に逆らうように、はずれにあるただ一つの風車が起こす電気だけで人々は生活を営んでいた。
そんな時が止まったかのような島で、まるで無垢な少女さながらの汐里はどこか窮屈そうだった。
病弱で思い通りにならない身体だったとしても、少女はやがて成長して大人になってしまうのだから。
時折、汐里はとても怖くなる。
"この島の事は好きだけど、もしかしたらあたしはこのままどこへもいけないのかもしれない"

ある日、汐里は島の子供達と遊んでいる純(末松暢茂さん)を見かける。
純は熱病で倒れてしまった汐里を助けた事がきっかけで、診療所の山崎(結城貴史さん)に島で暮らす事を薦められる。
梓の食堂で働き始めた純。言葉少なで素性はほとんど話さない純だったが、汐里は次第に、純のその柔らかい雰囲気に惹かれ始める。
そんな時、都会から絢(渡辺奈緒子さん)が純を追って島にやってきた。
"こんなところで何してるの?早く戻りなさい"

大切な何かを失った人だけが訪れるこの島。

何もかもが溢れすぎている都会で、大切なものを見失う事。
何もかもが手に入れられる世界で、大切なものを失くす事。

あたしはそれが
眩しくて見えなかったから、長い瞬きを繰り返した。