STORY


裁判所にやってきた『彼』と『彼女』。
ふたりにとって今日は初めての裁判傍聴の日である。
初めての裁判所、頼りは『彼』がネットで事前に調べ、プリントアウトしてきた「はじめての裁判傍聴マップ」と、あるノンフィクションライターが書いた一冊の「傍聴エッセイ」だけ。
映画やドラマのような、ドラマチックな世界を想像していたふたりにとって、初めて間近で見る法廷は、あまりにリアルで淡々としたものに感じられた。
被告人として座らされているのは、どこにでもいるような普通の人々。
しかし低い柵で隔てられているだけの、傍聴席から見える「向こう側」は確実に別世界の空気が漂っていた。
いつしか、現実の世界と非現実の世界が共存する、この奇妙な空間に引き込まれていくふたり。
目の前で繰り広げられるリアルな裁判、そしてエッセイ本の傍聴体験を読みながら、『彼』の中で、今まで考えた事のなかった事が大きくなっていく。
「いつ自分が被告人として裁かれてもおかしくないかもしれない」
しかし『彼女』の反応は全く正反対のものだった・・・。

生まれて初めて生で見る「人が人を裁く」現場。
興味本位で始まった裁判傍聴の先に見えてきたものとは?
そしてふたりの中に芽生えた、相反する感情とは?
これは舞台上と客席の全て人が共有する疑似裁判体験である!!