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松尾潔氏の楽曲紹介ページ
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(オリジナル・アーティスト / 発表年)

■01
Breathe Please 001
アルバムはBREATHEのアカペラで始めたいという私の希望をボーカルプロデューサーの和田昌哉さんに託してみた。「合鍵」を手がけてふたりの声質を熟知するだけでなく、作曲家としてもCHEMISTRYのナンバーワンヒット「It Takes Two」等の実績をもつ和田さんが書き下ろしてくれたのがこの曲だ。膨大な量の情報が凝縮された、短くも濃密なメロディ。タイトルはBREATHEの初めての冠ラジオ番組のタイトルを引用した。

■02
Lovers Again
(EXILE / 2007年)
私が初めてEXILEのプロデュースを手がけた楽曲。VBA1の課題曲としてまず世に出たのだが、そのオーディションでEXILE新メンバーに選ばれたのがTAKAHIROだった。
オリジナルでは作曲者のJin Nakamuraさんが自ら編曲も手がけていたが、今回はEXILEファミリーと付きあいの深い中野雄太さんにトラック制作を依頼した。オリジナルのテイストを適度に残しながら、BREATHEのために見事なカスタマイズを施す中野さんの手腕に脱帽。

■03
KISS OF LIFE
(平井堅 / 2001年)
「楽園」「why」などバラード歌手の印象が強かった平井さんが2001年に放ったアップテンポのナンバー。オリジナルでは当時世界的に流行したUK発祥のビート「2ステップ」を採り入れていた。今回はそのイメージを一新すべくホーンセクションを導入してラテン風味で仕上げたいと思い、その種の音楽に造詣の深い川口大輔さんに編曲をお願いした。曲終盤における宮田と多田のボーカルの掛けあいも大きな聴きどころ。

■04
Best Friend’s Girl
(三代目J Soul Brothers / 2010年)
VBA2の課題曲にして三代目JSBのデビューシングル。BREATHEにとってはビタースウィートな記憶がつまった1曲でもあるだろう。オリジナルの編曲を手がけていたのは中野雄太さんだが、今回はJin Nakamuraさんに依頼。つまりアレンジャー起用において本曲と「Lovers Again」とは対照的な関係にある。ここでNakamuraさんがとったアプローチは、このところにわかに盛り上がりを見せる90’s R&Bフレイバーの再現。

■05
You Go Your Way
(CHEMISTRY / 2001年)
今回収録したCHEMISTRYのレパートリー3曲はいずれも彼らのデビューアルバム『The Way We are』からのシングル。すべてナンバーワンを記録している。唯一のバラードの本曲は作詞家・小山内舞のデビュー作だが、その正体は私だった(ほかに立田野純という筆名も使い分けた)。同時に作曲家・豊島吉宏さんのデビュー作でもある。その正体は15年以上にわたる私の音楽的パートナーMaestro-T。12年ぶりの再登板となる今回の編曲でも熱投そして完投。VBA2でこの曲を選んで歌った三代目JSBの今市と登坂がゲスト参加し、終盤ではBREATHEと4人で壮大なハーモニーを聴かせる。

■06
合鍵
2011年12月21日にリリースされたBREATHEの記念すべきデビュー曲。今回「Best Friend’s Girl」でも実現した作曲・川口大輔、編曲・Jin Nakamuraというコンビネーションは現在のJ-POPシーンで最もスリリングな組み合わせのひとつではないだろうか。熱心なEXILEファンはお気づきのことだろうが、歌詞は「Ti Amo」で描かれた男女の情景を別アングルで捉えたもの。デビュー時にはそのことを強調するのは避けたが、ここではあえて出自を明示すべく両曲をつづけて配した。

■07
Ti Amo
(EXILE / 2008年)
EXILEをプロデュースした2曲目の作品。ナンバーワンを記録しただけでなく、彼らにとって初めての日本レコード大賞(第50回)を受賞した。タイトルはイタリア語で“愛してる”を意味する。女性目線での歌詞ゆえリリースにはリスクが付いてまわったはず。EXILEの勇気ある決断にあらためて感服すると共に、熱く支持してくださったファンには心から感謝したい。いたずらにUSのトレンドを追うのではなく「お箸の国のR&B」を強く自覚しながら作った曲なので、これほどの熱い支持を得たことは私にとっても大きな自信につながった。今回のカバーにあたっては、美女ふたりのサポートなしには完成しなかった。英語詞によるカバーで本曲の新たな魅力を引き出してくれたBENIさんはセクシーなタイトルコールと新たなイタリア語MCを、川井郁子さんは情熱的かつエレガントなバイオリン演奏を披露してくださった。オリジナル編曲と絶妙な距離感を保った中野さんの水際立った仕事ぶりも圧巻のひと言。

■08
ふたつの唇
(EXILE / 2008年)
本曲もまた「Ti Amo」のスピンオフとしての性格をもつ。ここまでの3曲を『Ti Amoトリロジ―』と呼ぼうか。宮田のささやき、多田の雄叫び。官能性と野性というふたりの持ち味が最も対照的に発揮された1曲かもしれない。

■09
Point of No Return
(CHEMISTRY / 2001年)
VBA2の最終オーディションは2010年9月15日に赤坂BLITZで行われた。その自由曲部門において宮田・多田組は自分たちの意思で本曲を選んで歌った。会場にいた誰もがダイナミックなハーモニーに心奪われたものだ。いま思えばこのことが彼らのデビューの大いなる助走となった。

■10
Winds
(久保田利伸 / 2011年)
アルバム『Gold Skool』収録のスロウジャム。今回唯一これだけ私がオリジナルをプロデュースしていない楽曲である。プロデューサーはもちろん久保田さんご本人。四半世紀近く付きあってきた彼とはコラボレーション作品も多いのだが、作詞家として関わらせていただいたものとしてはこの曲が最も気に入っている。久保田さんも好んでライブで歌っているようだ。BREATHEのふたりが語るところによれば、表情をつけるのが最も難しかったということだ。

■11
この夜を止めてよ
(JUJU / 2010年)
JUJUさんの第53回日本レコード大賞の優秀作品賞受賞曲を、彼女の翌年の同賞受賞曲「ありがとう」の作曲者である川口大輔さんがBREATHEのために新たに編曲した。本アルバムのなかでは貴重な女性アーティスト楽曲のカバーとなるが、「Ti Amo」でも証明したようにBREATHEのボーカルワークは女性言葉ときわめて親和性が高い。この武器は今後も大切にしたい。ちなみにふたりともコンサートに足を運ぶほどのJUJUファン。

■12
LOVE OR LUST
(平井堅 / 2000年)
タイトルが意味するのは“愛情か欲望か”。平井さんのレパートリーのなかでも艶やかさの表出という点では屈指の1曲である。彼との作品も多い田中直さんがヘヴィ・ファンク仕立てのトラックを制作してくれた。BREATHEの妹的存在であるFlower / E-girlsの鷲尾伶菜と武藤千春がそろって参加、オリジナルではDOUBLEのTAKAKOが担当していた重要なパートを見事に歌いこなしている。ここでの彼女たちのセクシーな立ち振る舞いは、FlowerやE-girlsの作品でふたりを知った人にとってはイメージを快く裏切るものだろう。

■13
Still
(Flower / 2011年)
前曲で目の覚めるようなボーカルを披露した鷲尾と武藤が所属する女性9人組Flowerのデビューシングル。これも編曲を田中直さんが担当。サウダージ感覚あふれるブラジリアン風味で調理し、悲しみをくぐり抜けた者だけが浴び得る光のまばゆさをサウンドで表現している。二宮英樹さんのディレクションのもと、終盤でスリリングなアドリブ合戦を展開するBREATHEのふたりが頼もしい。まったく新しい「Still」が誕生した。

■14
53F
(鈴木雅之 / 2007年)
ふたりのソロナンバー収録は、最初の制作ミーティングで私が提案したことのひとつ。まずは宮田ソロ楽曲から。鈴木雅之(マーチン)さんのアルバム『Champagne Royale』から、ファンの間では特に人気の高い本曲を選んでみた。私が全面プロデュースした極めてアダルトなこのアルバムを、宮田はアマチュア時代に相当聴き込んでいたらしい。今回のボーカルを聴けば彼の長年の想い入れも容易く理解できようというもの。想いの熱量を知った私がマーチンさんご本人にゲスト参加を要請したところ快諾を得た。初対面から圧倒的な存在感をみせるご本人とそのボーカルを前に緊張を隠せない宮田だったが、結果満足のいく仕上がりとなった。御大からは「20代ならではの53Fを聴かせてもらったよ。ありがとう」というメッセージをいただいた。感謝。

■15
Only Human
(K / 2005年)
つづいて多田ソロ楽曲。その陽気なキャラクターも相まって、ファンのあいだでは情熱的なイメージが先行しつつある彼。もちろん私もそんな一面を愛するひとりだが、その一方でストイックな歌い込みに強く魅かれてもいるのだ。ピッチの正確さ、ビブラートの味わい、抑揚のバランス、そして声量の豊かさ。そんな恵まれた資質を表現するために相応しい楽曲として選んだのがこの曲である。ストイシズムを貫徹させるべく、ボーカリストにとっては難易度の高いピアノとのデュオというステージを設えた。これはどうやら吉と出たようだ。

■16
PIECES OF A DREAM
(CHEMISTRY / 2001年)
CHEMISTRYのデビュー曲。2001年3月7日に発売され、7週目にしてナンバーワンに達してミリオンセラーを記録した、彼ら最大のヒットでもある。CHEMISTRYは私が審査員を務めたテレビ番組『ASAYAN』の「男子ボーカリストオーディション」で勝ち抜いてデビューしたデュオ。現EXILEのATSUSHIとNESMITHがその時のファイナリスト5名の枠に残っていたことを知る人も多いだろう。ただしATSUSHIと私が再会を果たして初めてのコラボレーション曲「Lovers Again」を世に出すためには、以後6年待たねばならなかった。そしてさらに6年の歳月が流れた。BREATHEはそんな経緯を知ったうえでATSUSHIからも直接アドバイスを受け、アルバムのレコーディングに臨んだそうだ。ATSUSHIの音楽的DNAを受け継ぐBREATHEのふたりがCHEMISTRYを歌う日がくるとは!そして物語はつづいてゆく。


2013年 春 松尾 潔